東京にもいろんな景色がありますが、大人になってから紀尾井町という街に、ひとつの憧れを抱くようになりました。
新宿通りと外堀通りに囲まれたそこは、ちょっとした森のような空間で、時間のながれがどこかゆったりとしていて、ふっと気分が緩みます。
ニューオータニのブティックが並ぶ辺りは、のんびりしていて、同じようにハイセンスでも銀座や青山とはまた違います。
環境というものは少なからず人のメンタルに影響を与えているだろうと思うと、議員会館周辺を歩くOLさんが妙に輝いて見えてしまったり、紀ノ国坂ですれ違う上智大学の学生さんは、私が通っていた大学よりもずっと都会的で洗練されたキャンパスライフを過ごしているようで、たまらなくまぶしく見えるのです。
外堀通りの上を走る首都高にびっちり詰まった車、これが東京の日常の姿だとしたら
ハンドルを握ったままじっとする運転手には、眼下の釣り人たちがどんな風に映るのか。
このお堀を境にして、流れる空気のスピード感がまったく違った風に見えます。
お堀に囲まれたスポットでも
働く人、学ぶ人、ホテルで休暇を過ごす人、釣りをする人、みんなが居心地良さそうに共存しているのか紀尾井町という街。
”ゆるい”なんていう言葉を当てはめたいけれど、ただそこには、人間にとってもっとも心地よい時間軸があるだけなのかもしれません。